順徳院
(百人一首100)順 徳 院
ももしきや古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり
(一人百首100)
わが屋戸の軒端のしのぶみるなへに過ぎにし人の有りや無しやと
百人一首の最後の一首は、宮中の古い建物に生えているしのぶ草に、武家の幕府がなかった天皇親政のよき御代を偲んだもので、偲んでも偲びきれないと詠って、結んでいる。
「百首」麻呂の閉めの歌は、人生は出会いと別れの繰り返し、これまでどれだけの人に逢い、どれだけの人とは再び逢うこともないのか、想像だにできない。
普段は些事に追われて、振り返ることも少ないが、家の軒端のしのぶ草を見るたびに、そのゆかしい名前のお陰で、長い間、会っていない人のことを、ふと偲ぶことがあるという歌である。
最後に、今回「一人百首」を詠んで、一三〇〇年前から八〇〇年前に生きた百人の人の歌とのやり取りを通して、目の前にいる人と詠み交わすような経験ができたことを記して、筆を擱く。